PARANOIA AGE 幕末異聞 「夢想敗軍記」
2005年 02月 07日
平成17年2月2日 水曜日 PM7時 初日
場所 新宿 スペース107
詳しくは http://www.paranoiaage.com/ こちらをどうぞ
久しぶりの東京、新宿。独身時代は毎月東京で泊りがけで3本、多いときには2日で5本は観た。今となってはチケット代にも事欠く次第。生活と芝居の天秤は傾くばかり。
今回は観劇と買い物をちょとしただけで、風邪を貰ってしまった。おかげで体調最悪。苦しかった。冬の観劇セットの使い捨てカイロとマスク、カテキンたっぷりのお茶は用意したのに。
ここにはSTEP片割れである山岸恵美子が出ている。去年は山梨で共同で野外公演もした。嵐の中で。
役者の中には、我が家で同じ釜の飯を食ったのもいる。これからもガンバレ。
佐藤さん、山梨に来た際にはまた一緒にぜひ。ワイン片手に温泉談話でも。
話は幕末。会津藩と官軍のせめぎ合いの中、新撰組の生き残りが流れてくる、というのが基本の話。なのだが・・
基本的に、歴史物に疎いのだ。今回は友人と共に見たのだが、帰りの車中で、彼に説明受けるまで流れが良くつかめなかった。聞けば単純なんだけどね。新撰組の生き残りっていうと五稜郭としか浮かんでこないのは、知らなさすぎだな、こりゃあ。
基本的な流れは、新鮮組とか官軍とか知らなくとも、時代物に良くある流れなので、台詞を追うだけでも十分理解できる。難しい話は無かった。
逆に、オーソドックスな話の分、役者の力量が良く分る。
役者で面白いのは、伊藤貴子さん。いいよな、あんなキャラ。
彼女は少年剣士役。初めて銃を任され、訓練をしているときだ。外れることの無いはずの彼女の銃のストラップが銃から突然外れてしまった。
彼女は一瞬「あ」という顔をするが、その内そのストラップをクルクルと指に絡ませたあと、「これは最初からこうゆう設定なのさ」といわんばかりに銃を握りなおすのだ。なんという舞台度胸。素晴らしい。
その後のシーンでは、城を守る武士たちが集まり、志気を高める所でも彼女はやってくれる。下手に居た彼女は、上手に居る下級武士とアドリブで何かやり取りをしているのだ。センターでは「がんばるぞ」とかやっているのに。
すばらしいではないか。このリアルな反応の積み重ねが生きた舞台になるのだ。
もう一人。長縄龍郎君。彼は舞台を降りると線の細いイメージなのだが、今回のような役になると俄然輝いてくる。体もそんなに大きくないので、目立つわけではないが、彼の演技には、暗闇で光る刃のような鋭さがある。周りの役者が目立つほど、彼の下から切り込んでくるような鋭い演技が光る。
この二人に関しては、別のタイプの芝居をどこかでやってほしいものだ。例えば心理劇のような台本上できちっと組み立てていかなければならないようなものに取り組んでほしい。そのときはぜひ最前列で見させていただこう。
好きなんだけど、あまりウケなかったシーン。長縄君演じる新撰組浪士が、領主宅に招かれて、秋場さん演じる領主の妻と食事を取るシーン。
長縄君の食べっぷりに秋場さんも負けじと食べ続ける。
これ、大好き。
ただし、この日はちょっと・・・初日ということもあって、探り合いをしていたのだろうか。長縄君は遠慮がち、秋場さんも自分の配分の可笑しさが計算できてない感じだった。千秋楽はどうだったのかな。この日の客は、意味が解らず、どうしていいかわからなかったのが多かった。
おしい。
さて、山岸恵美子。彼女も奥様役なのだ。身内だからひいき、というわけではないが、可でも不可でもないのだ。下手とかそんなんじゃない。奥様なのだね。非常に安定していて、突っ込みどころが無い。自分の演じる役を知っていて、そつなくこなしている。しかし・・
山岸だけではないのだ。全部に渡ってそうなのだ。話に無理はないし役も成立している。でも、それだけなのだ。観終わった後、何も残らない。これは前回の公演でも感じたことだ。
新撰組浪士の苦悩も感じない、城を守る藩主の思いも伝わってこない。なぜだろうか。山岸演じる奥様たちの気持ちも、台詞としてはあるが、心に残らない。
さて、今後に課題を残したのは、老婆役。彼女には余裕が無い。発声もいっぱいいっぱいで、聞いていて非常に疲れる。
あと、今力君。彼はスパイのような役なのだが、自分を抑えて演じる術がまだ確立されていない。初日ということもあって、さらにあせりのような感じがした。彼のことだ。初日が過ぎれば緊張の山も過ぎて、自分のペースで演技が出来ると思うが。大丈夫、落ち着いて。
客は勝手な見方をする。好き嫌いもある。それを前提として。
演劇はいつの間にか威厳付けがなされて、立ち位置を非常に気にして観る客も居る。立ち姿の綺麗さで役者のレベルを語る客も居る。でも自分はそんなことどうでもいい。伊藤さんや長縄君のように、台詞の無い時こそ現れる役者としての生き様に惹かれるのだ。
がんばれ。
場所 新宿 スペース107
詳しくは http://www.paranoiaage.com/ こちらをどうぞ
久しぶりの東京、新宿。独身時代は毎月東京で泊りがけで3本、多いときには2日で5本は観た。今となってはチケット代にも事欠く次第。生活と芝居の天秤は傾くばかり。
今回は観劇と買い物をちょとしただけで、風邪を貰ってしまった。おかげで体調最悪。苦しかった。冬の観劇セットの使い捨てカイロとマスク、カテキンたっぷりのお茶は用意したのに。
ここにはSTEP片割れである山岸恵美子が出ている。去年は山梨で共同で野外公演もした。嵐の中で。
役者の中には、我が家で同じ釜の飯を食ったのもいる。これからもガンバレ。
佐藤さん、山梨に来た際にはまた一緒にぜひ。ワイン片手に温泉談話でも。
話は幕末。会津藩と官軍のせめぎ合いの中、新撰組の生き残りが流れてくる、というのが基本の話。なのだが・・
基本的に、歴史物に疎いのだ。今回は友人と共に見たのだが、帰りの車中で、彼に説明受けるまで流れが良くつかめなかった。聞けば単純なんだけどね。新撰組の生き残りっていうと五稜郭としか浮かんでこないのは、知らなさすぎだな、こりゃあ。
基本的な流れは、新鮮組とか官軍とか知らなくとも、時代物に良くある流れなので、台詞を追うだけでも十分理解できる。難しい話は無かった。
逆に、オーソドックスな話の分、役者の力量が良く分る。
役者で面白いのは、伊藤貴子さん。いいよな、あんなキャラ。
彼女は少年剣士役。初めて銃を任され、訓練をしているときだ。外れることの無いはずの彼女の銃のストラップが銃から突然外れてしまった。
彼女は一瞬「あ」という顔をするが、その内そのストラップをクルクルと指に絡ませたあと、「これは最初からこうゆう設定なのさ」といわんばかりに銃を握りなおすのだ。なんという舞台度胸。素晴らしい。
その後のシーンでは、城を守る武士たちが集まり、志気を高める所でも彼女はやってくれる。下手に居た彼女は、上手に居る下級武士とアドリブで何かやり取りをしているのだ。センターでは「がんばるぞ」とかやっているのに。
すばらしいではないか。このリアルな反応の積み重ねが生きた舞台になるのだ。
もう一人。長縄龍郎君。彼は舞台を降りると線の細いイメージなのだが、今回のような役になると俄然輝いてくる。体もそんなに大きくないので、目立つわけではないが、彼の演技には、暗闇で光る刃のような鋭さがある。周りの役者が目立つほど、彼の下から切り込んでくるような鋭い演技が光る。
この二人に関しては、別のタイプの芝居をどこかでやってほしいものだ。例えば心理劇のような台本上できちっと組み立てていかなければならないようなものに取り組んでほしい。そのときはぜひ最前列で見させていただこう。
好きなんだけど、あまりウケなかったシーン。長縄君演じる新撰組浪士が、領主宅に招かれて、秋場さん演じる領主の妻と食事を取るシーン。
長縄君の食べっぷりに秋場さんも負けじと食べ続ける。
これ、大好き。
ただし、この日はちょっと・・・初日ということもあって、探り合いをしていたのだろうか。長縄君は遠慮がち、秋場さんも自分の配分の可笑しさが計算できてない感じだった。千秋楽はどうだったのかな。この日の客は、意味が解らず、どうしていいかわからなかったのが多かった。
おしい。
さて、山岸恵美子。彼女も奥様役なのだ。身内だからひいき、というわけではないが、可でも不可でもないのだ。下手とかそんなんじゃない。奥様なのだね。非常に安定していて、突っ込みどころが無い。自分の演じる役を知っていて、そつなくこなしている。しかし・・
山岸だけではないのだ。全部に渡ってそうなのだ。話に無理はないし役も成立している。でも、それだけなのだ。観終わった後、何も残らない。これは前回の公演でも感じたことだ。
新撰組浪士の苦悩も感じない、城を守る藩主の思いも伝わってこない。なぜだろうか。山岸演じる奥様たちの気持ちも、台詞としてはあるが、心に残らない。
さて、今後に課題を残したのは、老婆役。彼女には余裕が無い。発声もいっぱいいっぱいで、聞いていて非常に疲れる。
あと、今力君。彼はスパイのような役なのだが、自分を抑えて演じる術がまだ確立されていない。初日ということもあって、さらにあせりのような感じがした。彼のことだ。初日が過ぎれば緊張の山も過ぎて、自分のペースで演技が出来ると思うが。大丈夫、落ち着いて。
客は勝手な見方をする。好き嫌いもある。それを前提として。
演劇はいつの間にか威厳付けがなされて、立ち位置を非常に気にして観る客も居る。立ち姿の綺麗さで役者のレベルを語る客も居る。でも自分はそんなことどうでもいい。伊藤さんや長縄君のように、台詞の無い時こそ現れる役者としての生き様に惹かれるのだ。
がんばれ。
by engekistep
| 2005-02-07 12:50
| 演劇