秘密の花園
2006年 07月 10日
劇団B-BLACK 「秘密の花園」 作・唐十郎 演出・原和人
青葉町(南甲府)特設会場 http://www.b-black.jp/mac/index.html
平成18年7月8日・9日 PM7:00~
久しぶりのB、それも唐作品である。初めてBの公演を見たのも唐作品だったかもしれない。
Bは、山梨では珍しいアングラを主とした劇団である。さらに公演ではホールを使用せず、倉庫などを借り切って舞台や客席を手作りするという、とんでもないところである。今回も南甲府駅そばの大きな倉庫を2週間借り切って設営。かける金額も7桁は当たり前、スタッフもその道のプロというアマチュアの範囲を超える集団である。撤収すると分かるが、使っている材の料を見ると感心するより呆れる。
今回は準備段階から手伝いたかったが時間が無く、今回は受付と撤収のみ参加することになった。
で、舞台だが。相変わらずすげー。舞台設定は安アパートの1室。上手には共同便所(劇中ではご不浄と表現)正面には襖(正しくは窓なのだが、襖の表現のほうがぴったり)がある。劇中では後半大雨のため町中が浸水し、窓の外は川のようになってしまっている。Bはそこにプールを作って、実際にその中に飛び込んだりボートやイカダを浮かべた。下手すると舞台よりプールのほうが広いんじゃないかな。
ストーリーなのだが。残念ながらこの台本を読んだことが無い。唐作品に共通して言えるのは、例えばその作品に貫く主張というものが殆ど無かったりするし、登場人物も複雑に絡んでさらに他人の思いを自分の台詞としてしゃべったりするのでものすごく曖昧である。なのであえてストーリーは書かない。もしこの本をどこかで手にすることがあるなら、一度目を通してから芝居を見るといいかもしれない。
おそらく、今回初めて唐を見たという若者もいるであろう。で、彼らの感想はたぶん「とても複雑で難解な作品」と思ったに違いない。唐の作品をTVドラマ乗りで観たら、たぶん理解しがたいであろう。役者の口から出る台詞をそのまま受け取って理解しようとしたら楽しめない。
唐作品を読むと、彼の台詞が目の前に起きたドラマを多発同時的に言葉にしているのが分かる。
自分は背が小さくて巨乳の女性が理想なのだが、例えば仕事の関係でそのような女性が目の前に現れるとすると、仕事をする相手として冷静に接する自分と、口には出さないが下心を持って見ている心の言葉が同時に存在する。と、同時に、相手の女性にも似たような背景がある。仕事の相手として冷静に接している姿と、「嫌だこの人、いやらしい目をして」という心の言葉と。それを同時に台詞として成り立たせようとする。さらにそこに第三者を登場させ代弁するしね。
わーなんて下品な、と思われるかな。でもそれも、唐流の変換法で、美しい言葉で、詩的にやられるもんだから本当に感心するのだ。
さて、感想だが。
とても切なかった。芝居が・・・ではない。Bに対してだ。作品のレベル的に見ると、過去のBの作品の中では残念ながら下のほうである。なぜなら・・
理由は二つ。
パワーが無い。雨宮さん、原さんに共通して言えるのは、過去のB作品からの比較ではたぶん一番シンプルに、確実に演じていたと思う。立ち姿で言えば無駄が無く綺麗に立っていたのではないか。台詞もちゃんとしゃべっているし。よく言えば過去最高の「演技」だった。演出としてはそれでいいのかも知れない。でも、そのせいで唐の書く台詞のパワーが消されてしまっているのだ。ここで必要なのは、雨宮さん演じるアキヨシがそれでも立ち続けていようとする力強さではなかったか。良く分からない台詞の羅列を成立させるためには、もっともっと力技が必要だと感じた。
二つ目。役者間のレベル。
若い役者は良い。エネルギッシュだもの。上手いとか下手とか以前に、「俺はこの役をやるんだ!!」という情熱がひしひし感じて良い。アングラっぽいのだ。逆に言うとこれがアダになる。どうしても役者間のギャップが目立ってしまうのだ。
これも原さんの言う世代交代なのか?
今回とても良かったのは、かじか演ずる高橋誠さんである。過去の公演(ただし自分は全て観たわけではない。7割は観たと思うので、観てないのもある)での高橋さんの役は、どちらかというとちょっと引いた感じの役を振られていた感じがある。彼の顔つきもどっちかというとクールなほうなので、それはそれで間違いは無かったのだが、どこか本気ではないのか、と思わせる演技が多かった。ところが今回のはすばらしい。立ち姿も声も台詞もちゃんと通ってる。感覚から言うとちょっと頭の弱さも持った色男的役なのだが、全てにわたってキレがいい。高橋さんは顔もシャープで良い男なんだよね。なぜにもっと早くこのような役を見せてくれなかったのか。
上野の不忍池に飛び込む唐一行。彼らのパワーをこれからも田舎の若者に引き継いで欲しい。そのはちゃめちゃとも取れる演劇から発するドラマに感動させてよ。原さん、雨宮さん。
青葉町(南甲府)特設会場 http://www.b-black.jp/mac/index.html
平成18年7月8日・9日 PM7:00~
久しぶりのB、それも唐作品である。初めてBの公演を見たのも唐作品だったかもしれない。
Bは、山梨では珍しいアングラを主とした劇団である。さらに公演ではホールを使用せず、倉庫などを借り切って舞台や客席を手作りするという、とんでもないところである。今回も南甲府駅そばの大きな倉庫を2週間借り切って設営。かける金額も7桁は当たり前、スタッフもその道のプロというアマチュアの範囲を超える集団である。撤収すると分かるが、使っている材の料を見ると感心するより呆れる。
今回は準備段階から手伝いたかったが時間が無く、今回は受付と撤収のみ参加することになった。
で、舞台だが。相変わらずすげー。舞台設定は安アパートの1室。上手には共同便所(劇中ではご不浄と表現)正面には襖(正しくは窓なのだが、襖の表現のほうがぴったり)がある。劇中では後半大雨のため町中が浸水し、窓の外は川のようになってしまっている。Bはそこにプールを作って、実際にその中に飛び込んだりボートやイカダを浮かべた。下手すると舞台よりプールのほうが広いんじゃないかな。
ストーリーなのだが。残念ながらこの台本を読んだことが無い。唐作品に共通して言えるのは、例えばその作品に貫く主張というものが殆ど無かったりするし、登場人物も複雑に絡んでさらに他人の思いを自分の台詞としてしゃべったりするのでものすごく曖昧である。なのであえてストーリーは書かない。もしこの本をどこかで手にすることがあるなら、一度目を通してから芝居を見るといいかもしれない。
おそらく、今回初めて唐を見たという若者もいるであろう。で、彼らの感想はたぶん「とても複雑で難解な作品」と思ったに違いない。唐の作品をTVドラマ乗りで観たら、たぶん理解しがたいであろう。役者の口から出る台詞をそのまま受け取って理解しようとしたら楽しめない。
唐作品を読むと、彼の台詞が目の前に起きたドラマを多発同時的に言葉にしているのが分かる。
自分は背が小さくて巨乳の女性が理想なのだが、例えば仕事の関係でそのような女性が目の前に現れるとすると、仕事をする相手として冷静に接する自分と、口には出さないが下心を持って見ている心の言葉が同時に存在する。と、同時に、相手の女性にも似たような背景がある。仕事の相手として冷静に接している姿と、「嫌だこの人、いやらしい目をして」という心の言葉と。それを同時に台詞として成り立たせようとする。さらにそこに第三者を登場させ代弁するしね。
わーなんて下品な、と思われるかな。でもそれも、唐流の変換法で、美しい言葉で、詩的にやられるもんだから本当に感心するのだ。
さて、感想だが。
とても切なかった。芝居が・・・ではない。Bに対してだ。作品のレベル的に見ると、過去のBの作品の中では残念ながら下のほうである。なぜなら・・
理由は二つ。
パワーが無い。雨宮さん、原さんに共通して言えるのは、過去のB作品からの比較ではたぶん一番シンプルに、確実に演じていたと思う。立ち姿で言えば無駄が無く綺麗に立っていたのではないか。台詞もちゃんとしゃべっているし。よく言えば過去最高の「演技」だった。演出としてはそれでいいのかも知れない。でも、そのせいで唐の書く台詞のパワーが消されてしまっているのだ。ここで必要なのは、雨宮さん演じるアキヨシがそれでも立ち続けていようとする力強さではなかったか。良く分からない台詞の羅列を成立させるためには、もっともっと力技が必要だと感じた。
二つ目。役者間のレベル。
若い役者は良い。エネルギッシュだもの。上手いとか下手とか以前に、「俺はこの役をやるんだ!!」という情熱がひしひし感じて良い。アングラっぽいのだ。逆に言うとこれがアダになる。どうしても役者間のギャップが目立ってしまうのだ。
これも原さんの言う世代交代なのか?
今回とても良かったのは、かじか演ずる高橋誠さんである。過去の公演(ただし自分は全て観たわけではない。7割は観たと思うので、観てないのもある)での高橋さんの役は、どちらかというとちょっと引いた感じの役を振られていた感じがある。彼の顔つきもどっちかというとクールなほうなので、それはそれで間違いは無かったのだが、どこか本気ではないのか、と思わせる演技が多かった。ところが今回のはすばらしい。立ち姿も声も台詞もちゃんと通ってる。感覚から言うとちょっと頭の弱さも持った色男的役なのだが、全てにわたってキレがいい。高橋さんは顔もシャープで良い男なんだよね。なぜにもっと早くこのような役を見せてくれなかったのか。
上野の不忍池に飛び込む唐一行。彼らのパワーをこれからも田舎の若者に引き継いで欲しい。そのはちゃめちゃとも取れる演劇から発するドラマに感動させてよ。原さん、雨宮さん。
by engekistep
| 2006-07-10 17:39
| 演劇