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演劇を見たままの感想を綴ろう


by engekistep

わが町

県民参加劇 わが町
作 ソーントン・ワイルダー 演出 望月純吉 

 文化ホール事業としてのワークショップである。 http://www.yamanashi-kbh.jp/eventsponsordetails.php?p=20d94bce7c733a3533bea78a1a57a6d2 
今年から山梨放送系に文化ホールがシフトしたせいか、とても良いワークショップ事業となった。せっかくなので、今後もぜひともお願いしたいところだ。
 このWS。県民からの公募で26名の役者が出演、その他として文学座の役者が2名参加している。演出の望月純吉は山梨出身の演出家であり、現在は文学座の演出部に居る。STEPでは最初の作品の「検察側の証人」からの付き合いになる。
 
 わが町についての解説は、ウィキの http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%8F%E3%81%8C%E7%94%BA を参照していただこう。古き良きアメリカの町、グローバーズ・コーナーズの、ある数年間の話である。それもごくごくありふれた日常である。

 で、もう早速感想と行こう。まずこれが、全くの新人を含めたWSであることを念頭に置いての話だが、良い出来である。その殆どの良さがこの本にあることは間違いがない。多分全て本の通りに演出したのではないと思うが、(つまりWSの方法として)色んな演じ方を教えつつ、それを芝居に入れるという点でも全く問題なく仕上げている。
 公演時間としては、WSとしては異例の3時間だ。でもね、決して退屈な3時間ではありません。体感では2時間欠けるくらいの時間の流れ。つまり、飽きない。この日は予定があって、2時間くらいと予想していたので、このあとの予定に遅刻してしまったが、そんなのもうどうでも良くなるくらいの出来である。

 この話は、特別なドラマなど無いのだ。ただ淡々と日常が描かれている。しかしそれでもこの作品の評価が高いのは、その土地に生きようとしている人間達の愛が描かれているからだ。
 ではなぜ「とても良い」にならないのか。役者の台詞や動きが拙いのは気にもならない。だってWSだもの。新人だからね。そんなところを突いても仕方が無い。
 作品としては3部作。1部ではこの「町」のごくごく普通の日常が描かれる。朝起きて家族がそれぞれの活動に入る。そして成長する。2部では結婚をテーマに、3部では死がテーマになる。
 というのを前置きにして、残念ながらとても素晴らしい作品にならなかったのが、この「日常」への愛だ。
 1部ではストーリーテラーが語る後ろで、母親が台所仕事をしている。あるいは、家族が帰宅し、迎える。セットには何も無い空間で、パントマイムで家事を表現する。
 ここだ。
 母親は(この当時の一般的な母親は)家族のために家事をする。ご飯を作る。毎日毎日あきもせず淡々と同じ事を繰りかえす。
 なぜ飽きないのか。それは、家族を思う気持ちだ。それを簡単に「愛」と言う言葉に置き換えさせてもらえば、例えば食材を切るにしても、無意識に家族が食べやすい形に切る。味付けもそう。家族の顔を思い出し、喜んでもらえるように。
 家族を迎える時は、仕事をしている人であれば「ご苦労様」の意を込めて。かばんを受け取る。上着を脱いだものを受け取る。朝の送り出しでは、できる限りの笑顔で、祈るようにいってらっしゃいと。子どもも、ありきたりの親の愛と分かっていて日常を送るのだ。
 残念ながら、この辺の愛の表現が足りなかった。ただ単に、日常生活を繰り返しているだけだと。
 おそらく全ての役者は、ここでの演技をしたくて参加している。台本はテキストであり、演出に言われたとおりの台詞と動きをしているのだ。でも、この本への愛はあったのだろうか。本の中の町に対する愛はあったのだろうか。
 これがプロの役者だったら、日常の生活に過剰な愛など入れないという表現をとるのだろうが、素人さんである。この辺の愛の表現が足りないので、残念ながら2部、3部の盛り上がりがイマイチなのだ。成立はしているんだよ。2部だけ、3部だけ、という見方なら。でも、例えば子どもの顔を見て、疲れた顔も吹っ飛ぶような親の愛が1部でもっと感じられたら、この3部はもう涙物になるのだ。
 「布石」だよね。

 と、WSにしては厳しい感想とさせてもらった。だって、いいんだもん。前にも書いたが、あくまでもWSだ。台詞の成り立ちや衣装などは色々言うまい。でも、ただ参加して良かっただけのWSではないからね。特にこの作品に対しては。
 
  場所は文化ホールのリハーサル室。リハーサル室を壁で仕切って明りを入れたとてもシンプルな舞台。部隊の成り立ちは大好きである。椅子とテーブルだけ。背景は白のみ。このシンプルさが、想像力を刺激する。
 リハーサル室なんて練習でしか使ったこともないし、ましてや正面から入ったことも無い。いつものように裏から入ろうとしたら止められた。この先は許可証がないと入れません。リハ室は正面からどうぞというので、正面から入れるのですか?正面から言ったこと無いので・・・と言うと「では許可証を提示してください」という。じゃ無くて、普通に正面から入れるのかと聞いているのに「ここから入るのなら許可を」というのだ。日本語が通じないなあ。玄関から入って階段上がるのですか?その先は何処を通ればいいのですか?と丁寧に聞かないと理解できないのかなあ。俺の話し方って。ああ。
by engekistep | 2010-02-13 18:42 | 演劇